真空管のカソードコンデンサは47μF~100μFくらいの容量をつけるのが普通です。
計算上はこれでオーディオアンプとして十分な低域応答が得られるからです。
カソードコンデンサの容量をむやみに増やしてもなんらメリットはないはずですが、容量を大きくすると低域レスポンスに改善効果があるという記載をみつけました。



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それを試してみたくなります。
おそらく最終段のカソードパスコンを大きくするのがいいと言っている気がするのですが、どうせなら全段のカソードパスコン容量を増量します。
試すというより改造する気満々で高い電解コンデンサ(SPRAGUE ATOM)を買ってきました。
これで8800円也・・・



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2A3のカソードパスコンはキット標準だとUNICONの100μF 160Vが使われています。
それを以前SPRAGUE ATOMの100μF 150Vに換装していました。
ネット情報によれば、パスコン容量は最低でも220μF、できれば470μF~1000μFにしたいところとのこと。
SPRAGUE ATOMで選ぶとなると耐圧150V以上で入手可能なものは100μFまでしかありません。
SV-2A3の2A3カソード抵抗の両端電圧は実測で43V~44Vです。耐圧50Vでも使えそうです。それなら1000μF 50Vがあるのですが、電解コンデンサを耐圧ギリギリ近くで使うのは気持ちが悪いし怖いです。
悩んだ末、100μF 100Vを5本並列にして500μF 100Vとして使うことにしました。
コンデンサや抵抗を並列にしたり直列にしたりして使うのは見た目が悪くてスマートではないから本当は嫌いなんです。でもアルミ電解コンデンサは大容量1本より小容量パラにしたほうが特性がよくなりますから、自分を無理やり納得させてます。
買ってきたSPRAGUE ATOM 100μF 100Vを結束バンドで5本束ねて端子をハンダ付けしました。実測の結果、合成容量は542.9μFで、ちゃんとESRが1本のときより下がってます(当たり前か)。この中華マルチテスターでVlossというのが何を意味しているのかは分かりません。



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電力増幅部にはこんな感じで実装します。
うーん、やっぱり見た目が美しくない。でも仕方がない。



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電圧増幅部です。
初段6SN7のカソードパスコンはキット標準の100μF 16Vから500μF 25Vに。
次段6SN7のカソードパスコンはキット標準の47μF 160Vから100μF 150Vに。(もともと2A3のカソードに使っていたものを外して流用)
このくらいのサイズなら電圧増幅部のラグ板で無理なく実装できます。



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シャーシ内部全景です。
束ねた電解コンデンサがヤダ(しつこい)。

改造が済んで試聴です。
その音質ですが、切り替えながらの試聴ではないので率直に言って変化の具合はわからないです。
標準の電解コンからSPRAGUE ATOMに全交換したときの変わりっぷりは感動的でしたが、今回はコンデンサを増やしたんだという脳内音質改善効果が一番効いている気がします。
強いていえば、予想した低音もりもりになったというより厚みと弾力が増した感じ。そして意外なことに高域のすっきり冴えた伸び感がぐんと向上したような気がします。比較ができないので確かなことは言えないものの、こんなにパルシブでキレのある中高域だったかな。これはよいです。
改造直後の試聴ですから、秋葉原の東京ラジオデパートのシャッター半下ろしの店先の棚で埃だらけで売られていた電解コンデンサのエージングもまったくできていません。時間とともに更なる変化があるかもしれません。
定量的な部分では残留ハムのレベルが10%ほど下がりました。10%なんて誤差範囲なのでパスコン増量の結果なのかどうかは不明です。
もともと十分な容量がついていたカソードのコンデンサの容量を増やすとなぜ音質が改善するのかその理屈がさっぱりわからないですが、電解コンデンサはその振る舞いがコンデンサではないので、複雑な「何か」が起きているのはあり得ることだと思います。
たかだか数cmの機器内部配線を高級な線材やレトロ線材に変えたら音が変わるなんていう人がいる世界に比べたら、パーツを変えたり定数を変えて音が変化するのは当然といえば当然かもしれません。
今回は現実的な範囲でめいっぱい容量を増やしたことで気持ち的に満足しました。