トライオード TRX-P300S WE300Bを導入して1か月。
やっと音の感想です。



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自宅に届いてすぐの音は、300Bとは思えない上ずった音でした。
量感はなく中高域には気になるくらいの雑味があってヌケが悪く、本当に大丈夫なんだろうかと心配になるまとまりのない音でした。
SV-2A3と比べてあまりにも劣る音に、これはやっちまったかなーと不安を抱きつつ毎日4,5時間使って3日ほど経過したあたりでようやく安心して聴いていられるようになり、そこからはどんどん良くなってきました。10日ほど過ぎたころには落ち着いて、今はほぼ完全な音になったと思います。



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暗い部屋で眺めるTRX-P300S。
真空管のヒーターとバイアスメーターのバックライトの色は意図的に合わされているようです。違和感を感じずに楽しめる気遣いがあります。メーターのバックライトが明るすぎるので、不必要な時には消灯できるとうれしいです。
300Bパワーアンプは以前ソフトンModel8-300Bを所有していました。私はオーディオマニアというわけでもなく、管球アンプに夢中だったわけでもなく、憧れ対象の300Bアンプとしてかなりリーズナブルなそのアンプを購入しました。リビングのサイドボードにも置けるコンパクトサイズがお気に入りでした。
音はもちろん素晴らしくて、ソフトンModel8-300Bは銘球300Bの音、直熱三極管の音を存分に味わえる良機です。
トライオードTRX-P300Sは管球アンプの音という意味では「らしくない音」で、ブラインドテストをしたらソリッドステートアンプと聴き分けできないかもしれません。
300Bの音はその姿からイメージするものとは違い、中高域に独特な張りと透明感がある明るいトーンが特徴の球だと思っています。
音の重厚感みたいなものは意外にも2A3の方があって、300Bは濃いめでありながらカラッとしたサウンドです。
TRX-P300S-WE300Bは粒立ちのよい中高域寄りのバランスで低域は量感がありつつもタイトです。
開放的で真空管シングルアンプの緩さみたいなものをあまり感じないその音は、目をつぶって聴いたらきちんと設計されたデジタルアンプのようです。
この辺り、もしかしたら整流素子のSiC SBDが効いているのかもしれません。管球アンプの持ち味でもある音の立ち上がりの良さがより際立ち、ぐっと解像度が高い近代的な音がするのは整流管ではなかなか出し得ないSiCデバイスの特徴のようです。



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PSVANE WE300Bの美しさを見ているだけで癒されます。
ブルーの蛍光は頭部の半分に偏って現れます。左側に挿した球もほぼ同様です。
繊細で精緻なフィラメントは意外なほど控えめにぼんやり光るだけです。
現実的な価格で買える300Bはどれを使ってもPSVANE WE300Bほど満足は得られない気がします。今のところまったく球ころがしをする気は起きませんから、結果としては余計な散財をせずに済んでいます。
トライオードTRX-P300S-WE300Bの満足度は高いです。
2A3より濃く鳴る300Bの格をしっかり引き出していると思いますし、低重心になりすぎず生き生きとしたクリアリーサウンドです。
音の傾向は特にワイドレンジさを強調したものではなく、中域をしっかり聴かせるかまぼこ型をイメージさせるものです。
しかしまとまりすぎた音質が気に入らないという人がいても不思議ではないです。つまらない音といわれたらその通りかもしれませんから。
TRX-P300Sを1か月使ってみて、朝から夜までずっと鳴らし続けていて途中でスイッチを切りたくなったり、アンプを変えたくなったりすることはありませんでした。こういう機材はそう多くありません。
小音量でBGMを流しても、大きめの音圧でどっぷり音楽を聴いても、全部これでいいじゃんと思えるのは自分にフィットしているのかなと思ってます。