上質な低音は密閉型スピーカーからしか出せない。



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その格言が頭から離れず、衝動的に導入したのがRogers LS3/5a 65thです。
小型ブックシェルフで密閉型スピーカーって選択肢がほとんどないんです。
私の狭いデスクトップにも設置できるサイズだとこのスピーカーくらいしかないといっていい状態です。
BBCモニターの称号は悪い気はしませんし、慣らしが進んだ状態のLS3/5aの音は昔を懐かしむだけの古臭いものではないです。
しかしどこかつまらないのです。この「普通の音」が持ち味なんだと思います。だから半世紀近く前の設計のまま今も存在している孤高のスピーカーなんでしょう。
これがいいんだよと自分自身にいいきかせつつも、コレジャナイ感が同時に募っていきます。



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一方のELAC BS243.4は最新設計のバスレフ型です。
このスピーカーを導入して、改めて小型スピーカーで現代の低域が充実したソースを十分に鳴らしきるには密閉型では無理なのではないかと感じました。
そもそもLS3/5aは当時のラジオ放送の中継車用のモニターです。帯域が限られたAM放送で人の声を忠実にモニターするために調整されたものです。重低音から超高域までのワイドレンジな音楽再生を対象としたものだったとは思えません。とはいってもその音質は優秀でピュアオーディオ用にも通用するスピーカーなわけなんですが、ワクワクするような高揚感を一切感じない優等生的な音なんですよね。あ、そこにいたのねという空気みたいな存在。
そしてその音はどこか詰まった感じが拭い去れません。スピーカーが動きたいのに我慢を強いられたような感じで、これはコーンの動きを背圧のエアダンパーが強烈に抑え込む密閉型の特徴ではないかと思います。
密閉型で本当に上質な低音を再生するにはコーンをあまり振幅させずに済む大口径ウーファーを、大容量のエンクロージャーに入れた場合しか現実的には成立しえない気がしてしまいます。
少なくとも10cm~15cmのウーファーで机の上に置けるサイズの密閉型エンクロージャーでは充実した低域を再生するのは難しいようです。
バスレフ型はどんなにうまく設計したところで、ポートの共振点を中心に共鳴音特有のクセが出てしまい上質な音は望めないといわれますが、ユニットもエンクロージャーも設計技術も進化した今はそんなに拒否するほど下品な音はしないです。
背圧がかからない分、スピーカーの動きが抑え込まれず生き生きとダイナミックになる傾向は確かにありますし、聴感上はずっしり重くパンチのある低音が出ます。
開梱直後から好ましい音が出たELAC BS243.4は数10時間ほど鳴らした頃からJETトゥイーターの音が目立つように出始め、うっすらと往時のELACらしさを感じる音傾向になってきています。
ELAC BS243.4はずっしりしゃっきりしっとり聴き応えのあるワイドレンジな音が楽しいです。
音楽を楽しむ小型スピーカーはバスレフ型のほうが好ましいなと痛感しました。