グランドセイコー SLGH005 ”白樺” を買いました。
現時点ではまだ入手困難なモデルです。
この時計はダイヤル(文字板)がとにかく美しい。



SLGH005
グランドセイコースタジオ雫石の近郊には日本一の白樺の美林があり、このダイヤルデザインはその白樺林からインスパイヤされたものとのこと。その白樺林とは平庭高原のことでしょう。
白樺の様子を繊細かつダイナミックに表現していて、時計の顔としては世界中のどれにも似ていないユニークでひたすらに美しい仕上がりです。
GSらしくピカピカに研磨された針はより太く存在感が増しました。美しい青焼きの秒針は先端がカーブした形状に仕上げられています。
近年のグランドセイコーはダイヤルのテクスチャーにこだわったモデルを多く発表しています。
時計の文字板といったら古からおおむね様式が固定化していて、そのアレンジで違いを出す手法がほとんどなんですが、グランドセイコーは日本の季節とか自然のような、日本人にしか感じ得ない繊細な美意識をデザインに生かそうとしています。



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白樺モデルのダイヤルは写真だとその精巧さが半分も伝わりません。
型打ちという独創的な手法で製造されるダイヤルです。一枚一枚が手掘りのダイヤルじゃないって貶す輩もいますけど、このダイヤルが生み出される工程を知れば、単純なプレス加工で量産可能なものでないことがわかります。
グランドセイコー エレガンスコレクションの二十四節気モデルSBGJ249の”さざ波”ダイヤルが、白樺モデルのダイヤルを90°回して横向きにしただけというネット上のフェイク情報があります。
ご丁寧にフェイクのアニメーションGIFまで作られてSLGH005とSBGJ249のダイヤルが同一のもののように見せています。
GSのアンチさんたちはそれを信じてまた白樺を貶すわけですが、ちゃんと現物を見れば両者は別物だってわかります。SLGH005を買ったとき、SBGJ249を隣に並べてもらってしっかり確認しました。
SLGH005(白樺林)とSBGJ249(水面のさざ波)では表現している対象が違いますから、掘りのテクスチャは違うし、模様だって違ってますからね。



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白樺はケースもひたすらに美しくパーフェクトです。
ぱっと見は普遍的なグランドセイコースタイルそのものなのに、面構成がより複雑になり、グランドセイコーならではの定評あるザラツ研磨の鏡面と筋目加工の面が織りなす見事なケースです。
ケースとブレスレットが一体デザイン化された時計が増える中で、グランドセイコーはラグ(かん足)とエンドピース(フラッシュフィット)という昔からある構造です。
古典的ではあっても、まだまだやれることはあるんだというデザインの底力みたいなものを感じます。
ケース径40mmの時計にあえて採用された22mm幅のブレスレットは、バランス的にはややくずれて見えなくもありません。
白樺モデルのデザイナーはブレスレットの幅を広げ着用感を向上させるためにこのバランスにこだわったとのことらしいので、私は素直に受け入れることにしています。



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ブレスレットはもう見慣れたグランドセイコースタイルのまま。
国内外で絶賛されているSLGH005ですが、唯一ブレスレットだけは他のメゾンに対抗すべく改良の余地があるといわれているものです。
けっして安っぽかったりちゃちだったりすることはなく、高級腕時計らしい質感のブレスレットです。
振るとカシャカシャするっていう人がいますが、これはガタがあるのではなく腕なじみをよくするためにあえてチューニングされたしなやかさのためです。
強いていえばバックルが昔からかわり映えしなくてグランドセイコーのグレード感には至っていないかもしれません。実は改良されてバックルが薄くなりブレスレットとツライチになってるんですよね。見た目が同じなので気付かないポイントかもしれません。
セイコーの各種モデルが質感を上げてきているので、グランドセイコーはこのあたりでブレスレットのデザイン面に関してはブレイクスルーが必要なタイミングでしょうかね。
ロックボタンの操作感は滑らかで、はめるときの感触はしっとりしたものを感じますので、見た目こそ過去のままでもきちんと上級ブランド時計としての質感は伴っています。丁寧な作り込みや仕上げには安心感があります。



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そのブレスレットですが、調整方法が特殊です。
コマの両側に小さなネジが入っていますが、このネジはコマを外すためのものではなく、実際には中に差し込んだ丸棒のシャフトがコマどうしをリンクしています。両サイドのネジはこのシャフトが抜けないための蓋です。
なんでこんな方式なのかちょっと理解できませんが、ネジがそのまま貫通してリンクを兼ねる方法(ロレックスのオイスターブレスレットとか)だと、腕にはめてコマが動くとネジを緩ませる方向に力が加わり外れる可能性が否定できません(実際、私はデイトジャストで経験しました)。
それがSLGH005の構造であればコマが動いてもネジには全く力がかからないので安全性が向上するのかもしれません。(私の想像です)



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3列コマ(に見えて実は5列)の真ん中のコマはグランドセイコーの上位モデルだと両脇が鏡面加工されているものが多いです。SLGH005はステンレスケースの3針モデルとしてグランドセイコーで一番高価なモデルなのにもかかわらず、どういうわけか鏡面ではなく筋目のままです。
高級感という意味ではちょっと残念な気もしますし、いったいこれはどういう意図で採用された仕上げなのかわかりません。
キラキラ仕上げにして欲しいわけではなく、シンプルな仕上げにするなら存在意義のわからないコマ分割はなくしたほうがいいのではないかと思います。
コマそのものは無垢削り出しのとてもしっかりしたものです。幅が広くなったのに合わせてコマの厚みも増していて、ずっしりしたブレスレットです。
デザインはともかく高品質でしっかり作り込まれたブレスレットです。
ちなみに3列ブレスレットといえばロレックスのオイスターブレスレットがもっとも有名です。
グランドセイコーのほうがコマの可動する場所が多いです。
着用感はロレックスよりグランドセイコーが勝ってます。